風起西州 ~烈風に舞う花衣~
辺境の地で巻き起こる戦と政争に、2人は愛で立ち向かう! 大ヒット宮廷ラブ史劇、堂々の完結編!!
2023年
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第1話 大長公主の贈りもの
庫狄琉璃(こてき・るり)との婚儀を終えたばかりの裴行倹(はい・こうけん)が、ひそかに新しい屋敷を探しているらしい。崔(さい)氏から、そんな情報を聞かされた臨海(りんかい)大長公主は、裴府に1人の奴婢を送り込む。雨奴(うど)と呼ばれるその娘は、陸キ娘(りく・きじょう)――すでにこの世を去った行倹の前妻と生き写しであるだけでなく、奏でる簫の音色までもがそっくり同じで…。
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第2話 芙蓉の宴
臨海(りんかい)大長公主と泊まりがけで寺を参拝した翌朝、庫狄琉璃(こてき・るり)が屋敷に戻ると、門前で雨奴(うど)と鉢合わせに。県衙に泊まる裴行倹(はい・こうけん)に着替えを届けに行ったと言う雨奴だが、屋敷を出たのは前の晩。大雨で帰れず県衙に一泊したと悪びれもしない彼女に対し、侍女たちが琉璃に代わって憤慨するのだった。その後、帰宅した行倹の衣には“雨奴の匂い”が…。
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第3話 妹よ
庫狄琉璃(こてき・るり)と裴炎(はい・えん)が密会をしていた――大騒ぎする珊瑚(さんご)の声を聞きつけ、宴の出席者が続々と琉璃のいる池の周りへと集まってきた。先ほど臨海(りんかい)大長公主に頼まれて琉璃が描いた蓮の絵は、恋文に仕立て上げられ、今や密会の証拠となっている。一同が騒然とする中、琉璃が冷静に動向を見守っていると裴炎の妻・崔岑娘(さい・しんじょう)が現れ…。
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第4話 怪しい匂い
洛陽(らくよう)の荘園を管理する荘頭たちが、裴(はい)府へ突然やってきた。臨海(りんかい)大長公主が行倹(こうけん)の留守どきを狙って送り込んだと察した庫狄琉璃(こてき・るり)は、阿成(あせい)に中へ通すよう命じると、侍女たちには武(ぶ)昭儀から賜った飾り紐を用意するよう伝える。そして「今日は慣習を破るべきなの」という意味深な言葉を残し、荘頭たちのもとへと向かい…。
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第5話 身売り証文
庫狄琉璃(こてき・るり)が裴行倹(はい・こうけん)と一緒に行きたかった場所とは、陸キ娘(りく・きじょう)の墓であった。キ娘の命日に、彼女が愛した風景を刺繍した挿屏を墓前に供えて、行倹と一緒に供養を行う琉璃。夫婦を仲たがいさせる任務を負った雨奴(うど)は、そんな琉璃を目の当たりにし、彼女の器の大きさを思い知らされるのだった。後日、雨奴が琉璃と共に河東公府を訪れると…。
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第6話 陛下の怒り
病み上がりであることを理由に臨海(りんかい)大長公主が去った後の宴席には重い空気が立ち込めていた。荘園は裴行倹(はい・こうけん)の物なので、中眷裴(ちゅうけんはい)一族は今後その利にありつくことはできない――去り際に大長公主が残した忠告によって、頼りを断たれ、絶望の淵に追い込まれた中眷裴の面々。彼女たちの憎悪の視線が注がれる中、庫狄琉璃(こてき・るり)が口を開き…。
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第7話 賢い選択
裴行倹(はい・こうけん)が西(せい)州に遣わされるとの知らせを受け、臨海(りんかい)大長公主は喜んだ。庫狄琉璃(こてき・るり)から荘園を20万貫で買い取ることで話を進めていたが、西州へと旅立つ琉璃には、もはや20万貫が揃うのを待つ猶予がない。安値で買いたたく好機だと、大長公主は盧(ろ)氏に言い聞かせるのだった。一方、行倹は武(ぶ)昭儀の母・楊(よう)夫人に呼び出され…。
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第8話 新たな出発
臨海(りんかい)大長公主が荘園を手に入れぬよう算段をし、武(ぶ)昭儀の評判を上げることで裴行倹(はい・こうけん)への怒りを解く――荘園の売却をめぐる庫狄琉璃(こてき・るり)の離れ業とでも呼ぶべき手腕を楊(よう)夫人は褒め称えた。こうして難題は解決し、琉璃一行は西(せい)州へと向かうことに。ところが、琉璃は行倹には合流せず、西州で商いをして生きていくと言い出し…。
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第9話 北部の間者
米大郎(べい・たいろう)の口から、涼(りょう)州参軍・蘇南瑾(そ・なんきん)の名前を聞いて顔を曇らせる裴行倹(はい・こうけん)。その日、庫狄琉璃(こてき・るり)は行倹に知らせることもなく、ひそかに宿を発っていた。今、大長公主の息のかかった蘇家が、琉璃を狙ったら――と恐れたのだ。彼の不安は的中する。琉璃が身を寄せていた安(あん)家の商隊は、涼州の城門で止められ…。
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第10話 玉児の夫
蘇南瑾(そ・なんきん)は裴行倹(はい・こうけん)を牢から出すと、牢にいた女の尋問の手伝いを頼んだ。行倹が牢で気に入ったと思しき女をあてがうことで、ご機嫌をとろうと気を回したのだが、この女こそ行倹の妻・庫狄琉璃(こてき・るり)。行倹の計画どおり事は運び、琉璃を尋問部屋へ呼び出すことに成功した一方、玉児(ぎょくじ)と名乗る琉璃は尋問中、やたらと離縁した夫への不満を述べ…。
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第11話 闇夜の襲撃
裴行倹(はい・こうけん)の忠告を無視して、穆三郎(ぼく・さんろう)は宴に。すると三郎の顔を見るや近づいてきて、キク崇裕(きく・すうゆう)が長旅の労をねぎらい始めた。行倹の予想どおり、男色と噂される崇裕の標的となってしまい、しつこく言い寄られる三郎。やがて宴はお開きとなり、困り果てた彼は行倹に泣きつくのであった。しかし、翌朝、行倹は崇裕に侍従として三郎を差し出し…。
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第12話 お手並み拝見
西州に到着し、安西(あんせい)都護であるキク智湛(きく・ちたん)の歓迎を受ける裴行倹(はい・こうけん)。智湛のもてなしぶりは、娘婿の王君孟(おう・くんもう)もいぶかしがるほどで、次から次へと差し出される杯を、行倹も断ることなく飲み干していく。一方、別室で都護の夫人たちと宴席を囲む庫狄琉璃(こてき・るり)のもとには、キク崇裕(きく・すうゆう)が送り込んだ“刺客”が現れ…。
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第13話 失われた技術
赴任早々、裴行倹(はい・こうけん)に課された任務は、来年分の支出削減案の提出であった。キク崇裕(きく・すうゆう)がこの仕事を自分に一任したということは、官吏の禄を削る方法を取らせ、皆に恨まれるよう仕向ける魂胆なのでは――。そう察した行倹は、雑費を見直すことに。そして、公文書の紙の質を落とすことで大きく費用の削減が可能だと気づくのだった。しかし、そこにも崇裕が巡らせた罠が…。
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第14話 紙の使い道
キク崇裕(きく・すうゆう)は、大量の黄麻紙を運んできた安三娘(あん・さんじょう)に、紙を買い取れないことを告げた。隣の裴行倹(はい・こうけん)に頭を下げさせるため、助け舟を出す可能性を示唆する崇裕だったが、行倹はそれを聞き入れず、自らの屋敷に紙を全部運び込むよう指示をする。不思議がりながら裴府を訪れた三娘は、中庭で庫狄琉璃(こてき・るり)と職人らの作業光景を目にし…。
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第15話 誰の仕業か
庫狄琉璃(こてき・るり)はキク鏡唐(きく・きょうとう)に連れられ、大仏寺へ。道すがら、なかなか子を授かることができないのが悩みだと打ち明ける鏡唐。彼女の唯一の希望こそが、数年に一度霊験を現して涙を流すという大仏寺の仏像なのだと、琉璃は初めて知るのだった。寺での祈願を終え、帰ろうとした矢先、思いがけぬ事件が。馬車に琉璃だけが乗り込んだところを狙って、御者が馬に鞭を入れ…。
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第16話 消えた子牛
西州の各地で子牛が消えた事件の犯人は武騎尉の張二(ちょうじ)――そう断言する裴行倹(はい・こうけん)を、王君孟(おう・くんもう)は諫めた。張二の飼う子牛は増えたものの、彼は親戚の喬六(きょうろく)から子牛を奪ったと訴えられており、両方とも張二の犯行だとは考えにくい。行倹の主張が周りの官吏たちをあきれさせる中、キク崇裕(きく・すうゆう)は3日後に裁きを開くことを決め…。
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第17話 牛泥棒の正体
裴行倹(はい・こうけん)の策により張二(ちょうじ)の小細工は見破られた。各々別室で当時の状況を書くよう求められた証言者たちは偽証の発覚を恐れ、子牛の売買の現場は見ていないと告白。しかし、なおも張二は遊牧民から買ったという主張を曲げようとはせず、審理は続くのであった。一方その頃、庫狄琉璃(こてき・るり)は一連の襲撃の黒幕を吐くよう王君孟(おう・くんもう)を詰問し…。
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第18話 相いれない仲
この件は張(ちょう)参軍に任せよう――思ってもいない裴行倹(はい・こうけん)の返答に、張懐寂(かいじゃく)は目を白黒させた。滞納者の税を倍にするといった下策をあえて献じたところ、腹の内をまんまと見破られ、よりによって自分が徴収役を仰せつかるとは。戸惑う懐寂を送り出した行倹が信頼できる参軍たちと対応策を思案する中、取り立てに不満を持つ人々は行倹の屋敷へ押し入ろうと計画し…。
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第19話 長史の沙汰
次々に無理解な発言をする裴行倹(はい・こうけん)を前に、武城(ぶじょう)郷の民は怒りの声を上げた。ほとんどが砂漠の土地で、穀物が育たないにもかかわらず、田地と同様の税を取り立てられる――不平等な唐の税制に苦しみ続け、一筋の光であった新しい長史にも救ってもらえず、絶望的な表情を浮かべる人々。そんな悲痛な叫びが役人たちに響かないのを見届けた行倹は、ある沙汰を下す…。
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第20話 因縁の決着
キク崇裕(きく・すうゆう)の妻・慕容儀(ぼよう・ぎ)が乗る馬車の中に、包みが投げ込まれた。中を見ると「松竹亭で待つ」という文と共にキク家の族印が。昔、義父に見せられた族印に違いはない。しかし、今や臨海(りんかい)大長公主に従うしかない状況で何を求められているのかと、慕容儀は不安がるのだった。翌日、彼女は松竹亭で待っていた庫狄琉璃(こてき・るり)に「力になれない」と告げ…。
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第21話 仏像の涙
孔(こう)氏は、今まで誰にも明かさなかった過去を大仏寺の僧・義昭(ぎしょう)に言い当てられた。息子の病を治すため、義昭の言うとおり早朝に大仏寺を訪れる孔氏。仏前で1人、自らの罪を告白し、息子の救済を願うと、仏像の目からは涙が。数年に一度起きると言われる“西州の奇跡”を体験し、孔氏は思わず気を失ってしまうのだった。息子は助かると安心した一方、孔氏には義昭への疑念が…。
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第22話 足りない兵糧
裴行倹(はい・こうけん)夫妻の尽力によって、臨海(りんかい)大長公主の人質となっていたキク崇裕(きく・すうゆう)の妻子は解放された。これまでは警戒していたものの、家族を救ってくれた恩人・行倹に、心からの感謝をおくるキク智湛(きく・ちたん)。こうして行倹は本当の意味で西州長史として迎え入れられることとなった。そんな中、行倹に恨みを持つ蘇南瑾(そ・なんきん)が西州に遣わされ…。
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第23話 強気な令嬢
穀物の計量を担うべき者として裴行倹(はい・こうけん)が呼び寄せたのは、大仏寺の僧たちであった。蘇南瑾(そ・なんきん)や商人たちは意外な人選に驚くが、ここにこそ行倹の策の眼目が。兵による不正な計量を見越した行倹は、一度穀物を商人から大仏寺に売らせ、僧が計量したのち、軍倉に納入すると言うのだった。高名な法師が見守る中、計量は終わり、何事もなく収めようとする南瑾に行倹は…。
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第24話 父の数珠
阿史那雲伊(あしな・うんい)は急いで露店へと戻ったが、数珠はすでに売られたあとだった。屋敷に戻り、泣いて部屋に閉じこもる雲伊。普段は明るい彼女の意外な一面を見て、心配をした庫狄琉璃(こてき・るり)は店へと向かい、数珠の買い手を捜し始めるのだった。一方、キク崇裕(きく・すうゆう)に取り入るため工房へと来た張敏娘(ちょう・びんじょう)は、門前で出入り禁止を言い渡されるが…。
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第25話 人買いの悪事
綿布の作り方を広めるため、村を訪れた庫狄琉璃(こてき・るり)一行。工房で織った綿布を触って感動する村娘を前に、琉璃は自ら織り機を操り、手ほどきを行っていく。西州が新たな一歩を踏み出す手助けができた喜びを噛みしめる琉璃の横では、何やら不穏なやり取りが。せきをするキク崇裕(きく・すうゆう)に対し、阿史那雲伊(あしな・うんい)が庭に生える草の根で作った怪しげな薬湯を差し出し…。
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第26話 万民の思い
公文書を持って出直してほしい――庫狄琉璃(こてき・るり)は、米大郎(べい・たいろう)を連れ去ろうとする蘇南瑾(そ・なんきん)との口論の末、強気に言い放った。そんな中、瀕死の状態の大郎に異変が起こる。消耗した体には薬が強すぎ、苦しんだあげく、息を引き取ってしまったのだ。蘇生を試みる韓四(かんし)の鍼治療もむなしく、無反応の大郎。その亡骸を見届け、南瑾は引き揚げていき…。
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第27話 目を覚ませ
程(てい)大総管と王(おう)副総管に、陛下の沙汰が下った。いずれも死罪や免官と大変重いものだが、唐にとって不名誉となる商人虐殺については触れていない。蘇海政(そ・かいせい)も別件での処罰となり、前線を離れるだけに留まるのだった。代理で大総管を任された蘇定方(そ・ていほう)を支えるべく裴行倹(はい・こうけん)が家を空ける中、庫狄琉璃(こてき・るり)は体調を崩し…。
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第28話 隠し事と優しさ
またもや張敏娘(ちょう・びんじょう)が庫狄琉璃(こてき・るり)の見舞いにやってきた。追い払うために応対に出た阿史那雲伊(あしな・うんい)であったが、敏娘の今回の目的は雲伊の素性を探ること。敏娘に挑発された雲伊は、いとも簡単に北部の出身であると口を滑らせ、敏娘は早々に帰っていくのだった。弱みを握られ急に不安がる雲伊をよそに、裴(はい)府には喜ばしい出来事が…。
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第29話 月夜の再会
阿史那雲伊(あしな・うんい)は、卑怯な手ばかりを使う張敏娘(ちょう・びんじょう)に対し、恋敵ならキク崇裕(きく・すうゆう)にまっすぐ想いを伝えるよう怒りをぶつけた。しかし敏娘は、崇裕との縁談は親族が望んでいることであり、誤解だと言い張る。そればかりか崇裕には都に妻子がいて、想ったところで誰の夫にもならないと、雲伊の心を折ろうとするのだった。初めてそれを知った雲伊は…。
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第30話 都督からの頼み
時は経ち、6年後。裴(はい)府の侍女たちが賤籍を抜けて嫁いでゆき、家族を増やす中、庫狄琉璃(こてき・るり)は大病のあと、本来の体調を取り戻せておらず、子供を授かることがかなわないでいた。跡取りのいない裴府は、今や西州の令嬢たちの間で注目の的。今日は都督の側室である祇(き)夫人から琉璃に宴の招待状が届いた。そんな夫人の狙いを知りつつ、琉璃はあえて誘いを受けることに…。
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第31話 大氏族たち
大総管である蘇海政(そ・かいせい)から、西州へ軍令が届いた。内容は、亀茲(きじ)の反乱軍の残党を殲滅するための出兵と、20万石の穀物の調達。3000足らずの敵を始末するのには、どうにも多すぎる兵糧であるが、すぐさま蘇大総管の狙いを見抜く裴行倹(はい・こうけん)。いつものごとく私腹を肥やすためのみならず、恨みを持つ行倹に無理難題を突きつけ、失敗したら処刑する腹なのだ…。
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第32話 婚礼の日
西州の大氏族たちが、蘇(そ)氏父子と手を組んで、キク(きく)家を潰そうとしている――穀物の買い取り日の前日、備蓄分を出し渋る父の様子を見て、王君孟(おう・くんもう)は悟った。キク家に対して恩を仇で返してはならないと説き、父を諫める君孟。しかし、冷静な判断力を失っている他の大氏族たち同様、父にもその言葉は響かないのだった。翌日、不安は的中する。十分な量の穀物が集まらず…。
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第33話 危険な輸送任務
20万石の兵糧の調達に成功した裴行倹(はい・こうけん)。しかし、次なる問題がのしかかる。蘇南瑾(そ・なんきん)が兵糧輸送任務の監督を拒否したのだ。これに怒ったキク崇裕(きく・すうゆう)は、腹いせに南瑾の義従兄である張懐寂(ちょう・かいじゃく)に、その役目を押し付けるが、さすがに経験の浅い懐寂に一任するのも無理がある。結局、行倹が名乗り出て、一緒に指揮を執ることとなり…。
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第34話 逆賊とその一味
輸送任務から無事帰還したキク崇裕(きく・すうゆう)は、阿史那雲伊(あしな・うんい)から夕餉を振る舞われた。先ほど張敏娘(ちょう・びんじょう)が雲伊を尋ねていたことから、留守中に雲伊との仲を裂こうとしていたのだと察する崇裕。しかし、当の雲伊は飄々としており、敏娘の企みに気づいてもいない。純粋な雲伊の様子に日常が戻ってきたと実感する崇裕だったが、安らかな時は長く続かず…。
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第35話 分断作戦
兵に囲まれた都督府に籠もり続ける裴行倹(はい・こうけん)とキク崇裕(きく・すうゆう)。蘇南瑾(そ・なんきん)の呼びかけに応じ姿を現した2人は、焦る様子もなく昼餉を要求し、籠城を続ける構えを見せる。南瑾が行倹のみを解放しようと申し出るも、行倹はこれを拒否。崇裕と共に残ることを決めるのだった。そんな中、張敏娘(ちょう・びんじょう)の侍女・娜娜(なな)が大騒ぎをしながら現れ…。
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第36話 護身符
北部軍によって包囲された庭(てい)州へと向かうことが決まったキク崇裕(きく・すうゆう)。同行する裴行倹(はい・こうけん)は一滴の血も流さず包囲を解く策があると言うが、朝廷へ奏上する手段は妨害され、よそに助けも求められない状況下で、夫を戦地へと送り出す庫狄琉璃(こてき・るり)は不安そうだ。だが行倹は、大仏寺まで護身符をもらいに行く琉璃の、妙な信心深さを不思議に思い…。
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第37話 (最終話) ままならぬ世で
庫狄琉璃(こてき・るり)の暗躍により、裴行倹(はい・こうけん)は庭(てい)州での騒ぎを収めた。蘇(そ)氏父子の悪事も明るみとなり、陛下から沙汰を待つところに、蘇海政(そ・かいせい)の後任となる高賢(こう・けん)が勅書を携えやってくる。行倹は新設される都護府の副都護、キク崇裕(きく・すうゆう)は左屯衛中郎将と破格の出世が決まる一方、肝心な蘇氏父子には触れられておらず…。
作品詳細
婚儀を終えたばかりの裴行倹(はい・こうけん)が、ひそかに新しい屋敷を探しているらしい。崔(さい)夫人から、そんな情報を聞かされた臨海(りんかい)大長公主は、裴府に1人の奴婢を送り込む。雨奴(うど)と呼ばれるその娘は、陸キ娘(りく・きじょう)――すでにこの世を去った行倹の前妻と生き写しであるだけでなく、奏でる簫の音色までもがそっくり同じだった。「旦那様をお慰めします」と、行倹に近づく雨奴。「大長公主は策略家ね」。そうつぶやいた庫狄琉璃(こてき・るり)は、行倹と雨奴を伴い、挨拶という名目で“敵陣”へ乗り込むことに…。